魔力の渦がねっとりと私を弄ぶようにしがみついてくる感覚に、身体の中から何が喉へとせり上がってきそうになるのを堪えるので必死だった。


時折壁を伝って歩く、見たことも無いヤモリに似た生き物が私を監視するかのように、じっと見つめてくるものの襲ってくる気配はない。


それどころかゼノが恐れていた魔物の気配がこれっぽっちも感じられない。


私みたいな貧弱な雑魚には興味がないって感じなら、私には好都合なことなんだけど。


たださっきからずっと本能が察知している危機感に、身震いを起こしそうになっていることからして……相当ヤバい。


戦い慣れなんかしてない私でも、それぐらいはいとも簡単に分かってしまう程にヤバい。


進むべき道の先からも辿ってきた道の奥からも、魔力が大きい何かが私を挟むように徐々に近づいてきている。


「その二つに囲まれる前に絶対連れ出してみせる」


根拠のない自信を言葉にして、今にも足が縺れそうになるのを我慢してその先へと急ぐようにしながら前へと進んでいく。


あれだけ続いていた闇の道が微かに和らいで、足元を照らす照明魔法がいらないほどに道の先から光が差し込んできた。