魔力の渦を巻いている道はどうしても唯一の頼りである文献の記述が頭にしがみついて、身体も頭もその道を拒む。


だけどそうとも言っていられないと、絶望の札を引かないために残り少ない魔力を細い糸を紡ぐように発動させる。


「妖精の足跡よ、迷い人に続け《探知魔法 ディスグレイト》」


ゼノの弟さんの僅かながらの魔力を探知して、まるで磁石のように身体が引き寄せられる一本の道を見つめると、薄らと小さな人の足跡が地面に浮かび上がっていく。


フラフラとした足取りで奥へと進んで行ってしまった足跡が辿った道に思わず頭を抱えた。


重たいため息を零しそうになるけれど、ここはもうどうしようもない。


「よりにもよって一番魔力の渦が強いところって……私って本当に運がないわね」


行くしかないから行くけど、自分のついてなさには乾いた笑いしか出てこない。


でもそんな笑いを自分に向けてる暇はあまりなさそう。