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ただずっと一本の長い、奥深くへと続いていくぬかるんだ道を歩き、時折聞こえてくる雄叫びのような地響きに身を怯ませながらも着々と前へと進んでいた。
魔窟内に充満する、どキツイ魔力の渦に狼狽えそうになるのをぐっと堪え自分の魔力が奪われないように腹に力を入れた。
実際に体験はしたことはないが、ずっと前に文献で魔力を吸い取る空間が存在するというのを読んだことがあった。
魔力を吸い取られた弱者は、魔力を吸収する強者によって支配されていくのだと。
仮にそれがこの場所だとしたら……今のめちゃくちゃ少ない私の魔力なんか一瞬にして吸い取られて終わりだろう。
ただ足元を照らす魔法がまだ消滅せずに、淡く光を放っていることから“まだ”吸い取られてはいないみたいだけど。
ピチョン……とすぐ横で水滴が落ちる音が怪しく遠くまで響く。