「弟さんを必ず見つけてくるから。ゼノはここでいざって時のために、ここに居て貰わないと私も戻って来れないから。お願い、ここで待っていて」


「……や……そく……」


「え?」


「……オレからも一つ約束させて。怪我だけはしないで。それと絶対にここに戻ってきて」


泣きそうなゼノを優しく抱きしめて、彼の耳元で私自身にも言い聞かせるように呟いた。


「うん、約束よ」


頭を撫でて視界に映り込む光の粒に、僅かながらも加護の力を注ぎ込む。


いざって時はこの子を守ってやってほしいと光の粒に願いながら、ゆっくりとゼノから離れるように立ち上がる。


「行ってくるね、ゼノ」


気持ちを引き締めるように顔をパチンと軽く叩いてから、最後にゼノに笑顔を向けてから大きく口を開ける魔窟へと足を向ける。


後ろから心配そうに見つめるゼノの視線を振り払って、私は前へと進む足を止めることなく歩き続けた。