それにこの家の暮らしも全てが悪いわけでもない。
朝は少し遅く起きても怒られないし、あちらこちらから陰口を叩かれるようなこともない。
どこかの冒険者も、住めば何れかは都になると笑いながら言っていた。
手馴れた手付きで部屋の明かりを灯すと、子ドラゴンがその光景にはしゃいだような声を上げた。
「すぐに家に帰してあげるから、もう少し待っててね」
藁を詰めた硬いクッションの上に乗せて頭を撫でてやると、大人しくその場にしゃがみ込む。
棚の上に置きっぱなしにしていた石灰石を手に取って、何度も何度も消しては書いてを繰り返している床に魔法陣を描いた。
聖女の力を使うのには詠唱さえしてしまえば、上手く魔力が展開されていくのだけれど、その他の魔法に関しては落ちこぼれなもので上手く使いこなすことが出来ない。
それの補助として使うのが手書きの魔法陣。
本来だったらこれも聖女の力と同じように発揮されるのが普通なのに、私には上手く使いこなせていないせいでこれまでアカデミーの試験はぜーんぶ追試。
赤点万歳!