他にも道中で遭遇した数々の魔物は、ただこちらの様子を伺うだけで襲ってくることはまず無かった。
自分の身を守るために攻撃するのは当たり前だけど、敵と認識される人間を相手に何もしてこないなんて常識を疑ってしまう。
「なんか不思議な場所ね」
「大体の人間は、この霧を越えた少し向こうまでが行くのが限界。それ以上先は強制的に転移魔法で森の入口まで戻される仕組みになってるんだ」
「魔物達は襲ってこないの?」
「この大森林の魔物は知性があるから、森に危害を加えたりしない限りは襲ってこないよ。素材集めだって過度にしなければ、別に何もしてこない。……ただオルドス洞窟の魔物は別」
「……」
「あそこにいるのは、強い力を求める生き物なんだって母さんは言ってた」
厄介な魔物達が集う場所……それが迷宮。
分かってはいるけど、ここに来て今更本当にどうにかできるのか不安になって来た。