街から背を向けるようにして歩き続け、大地を守るように鬱蒼と生い茂る大木が生み出した大森林の中を進んで行くと、冒険者じゃない凡人の私でも分かるくらいに空気が変わっていくのが分かる。


立ち篭める霧は一層と濃くなるばかりで視界が悪く、元来た道すらも分からなくなりそうだった。


そんな状況下に置かれていても冷静でいれるのは、私の手を引くゼノが取り乱すことなくただひたすらに前を進んでいってくれるから。


流石、守り人の息子といったところだろう。


この地を守る者として大森林を知り尽くしているようで、獣道とも似つかない道無き道を進んでいく。


青白く光る虫やキノコが道を照らしてくれるお陰で、暗さは感じられないというのに、影に支配される感覚だけが後を追いかけてくる。


振り返ってはいけないと本能が訴えて、ひたすらに見えない道をただ真っ直ぐに歩いた。