「最初から私は危険な目に遭う運命にいるのよ?怖いものは何もないわ。端から挑もうなんて、そんな馬鹿なことは考えてないし、危険だと思ったら直ぐに引き返すから。まずは弟さんを探すこと、それだけを考えよう」
聖女としての証を失っている私に、信頼しろと言うのは中々難しい話だけど、今目の前にいるこの子に手を差し伸べてあげられるのは私しかいないから。
助けを求めている人に手を差し伸ばさないなんて、私には出来っこない。
想いが伝わったのかゼノは私を真っ直ぐに見つめて、強く頷いた。
「じゃあ、行こうか。ゼノ、魔窟まで案内して貰ってもいい?」
立ち上がったゼノは黙って私の手を取って、急ぐ気持ちのままに歩き出す後ろ姿を見つめながら小さく深呼吸した。
守るべき者を守る――それが私の務めだと強く自分に言い聞かせながらゼノに連れられるまま地面を力強く蹴りながら前へと進んだ。