泣くのを何とか堪えている彼に安心感を与えるように頭を撫でていると、手首に小さなかすり傷をあるのを発見し、そっとその手を取った。


「……癒しの加護よこの手に宿れ、《回復魔法【ヒール】》」


淡い光の粒が男の子の手首に降り注ぐと徐々に傷口が塞がっていき、光が消える頃には手首にあった傷口は消える。


私には見慣れたこの光景だったけれど、男の子はさっきまで泣きそうだった瞳を輝かせて息を飲むように見つめていた。


「はい、これで良しっと」


「お姉ちゃん……本当に聖女様なの?」


私への緊張感を解いてくれたのか、恐る恐るではあるけれど男の子は私の目をしっかりと見てくれた。