ため息をつきそうになるのをぐっと堪えて、この次から次へとおかしなことに巻き込まれている状況の改善をしなければ。


「私は別に疚しいことなんかしてません」


「ふん、どうだか。隙を見てお近づきになろうとしてる、その浅はかな考えは私には全部お見通しよ」


「……」


こう言ったところで相手の考え方が変わるなんて思ってもいなかったけど、やっぱり意味はないようね。


ここは誠意を見せつけこの場を去るしかないと、頭を切り替える。


「お騒がせして申し訳ございませんでした。これ以上ルリナさんのお時間を使わせてしまうのも心苦しいので、私達はお暇させていただきます」


頭を深々と下げて下手に出る手段に出たけれど、ルリナさんから感じる怒りのオーラは揺るがない。


「貴方の正体を掴んだ今、私がそう易々と帰すとでも思って?」


「え……?」


「さっきも言ったように、聖女の貴方が職務を放棄しているのがバレたら自分の立場が危うくなる。しかも侯爵家の娘にこの情報を握られているのよ?」


どうやらその情報を漏らされたくなかったら自分の指示通りに動けと、圧をかけてきているらしい。