自分の力を過信してはいけないと、昔よく先代に言われていたことは、今の私にちゃんと根付いているお陰で、いざって時の立ち回り方だけは考えられていることが何よりの救いだ。


聖女だけど、城から追い出された半人前の私は、こうして地道に、与えられた生きる知恵をフル活用して、生きていく方法を見つけられている。


高々と聖女だ!と自分の地位を見せつけてふんぞり返っていれば、クリフ王子に目を付けられて自分の首が飛ぶのは目に見えている。


だから、こうして周りには私の存在を公にしないようにと約束させて、こそこそと生活しているわけだ。


他の国の聖女が見たら、どんな目で私を見てくるのか想像してみると、少し笑えるけれど。



「さて、とりあえず家に戻ろう」



抱きかかえた子ドラゴンの顔を覗き込みながら、リュードルにそう声を掛けて、私は目の前でゆっくりと動いている問題をどうにかせねばと頭を働かせた。