「あの、失礼ながらもう一度仰って貰っても?」


突然呼ばれた王宮の謁見の間で私は片膝を折りながら目の前の玉座で足を組んで座る、この国の第一王子のクリフ王子に怪訝な顔を向ける。


そんな私にお構いなく、クリフ王子は口を開き先程と同じ言葉を口にした。


「聖女リゼ・マーキアス、今ここでお前との婚約を解消する。二度も言わせたのだ、その使えない頭にこの言葉の意味をよく叩き込め」


呼ばれた自分の名前に、この話はちゃんと自分が対象の話なんだと、理解するしかない。


使えない頭とは失礼なと突っ掛かりたくなる気持ちを抑え、如何にも不機嫌そうなその顔で睨みつけてくるクリフ王子を見つめた。


王族の血を引くだけあって漂わせる空気感が違う、それは十歳にもなっていない、まだ聖女の力が宿りたての頃に出会ったあの時から何も変わっていない。


あれから早八年の時が経ったけれど、クリフ王子は良いようにも悪いようにも変わってない――本当に何も。