静かなこの空間にチュッとリップ音が響いた。



それと共に抑え付けられていた手が自由になってダラリと下に落ちる。



唇が離れて「はあっ…」と、やっと酸素を取り込めた。




目が合うと、

春はトロンと艶めいた目をしていて





「早く…俺のものにしたい」





温かい手が私の頬を優しく撫でる。





「……約束、ちゃんと覚えてるよね?」

「や、くそく…?」





呼吸が乱れているから言葉が途切れ途切れになってしまう。




約束って、なに…




混乱する脳内で必死に考えた。





春とした約束って、





「…………っあ。」





"もしこの小説が映像化されるとして、俺がその主役に選ばれたら結婚してほしいんだけど。"





すぐに思い出したソレ。



あの時はただ気持ち悪くて、意味が分からなくて、キモかったから嫌なほどにその記憶が脳にこびりついていた。