(……………さて、)





騒がしく動いていた鼓動もおさまってきて、手に取った本のページをめくる。



初めての本に出会うたび、私はいつも胸が鳴るんだ。




楽しいと思う気持ちは人それぞれだと思う。



友達と遊んでいる時とか

ゲームをしている時とか

スポーツをしている時とか



その感情は人によって異なるもの。




その中でも、私は、本を読んでいる時が1番楽しい。



読み始めると止まらなくなって時間を忘れてしまうほど。


周りに誰かがいたとしても、それさえ気にならなくて、没頭してしまう。





………それが今この瞬間であって


一冊の本をじっくりと読んでしまっていた。




読んでいたにも関わらず、ハッと我に帰ってこれたのは春が私の髪の毛を触っていたからだ。







「あっ…ごめん、没頭してた…」


「んーん、全然いいよ。そのまま読んでて?」




「………読みにくいんだけど」





私の髪の毛を指に絡ませたり、軽く解いたり。


ずっとその繰り返し。






そんな彼からは


お風呂上がりの香りがして─────






「本を読んでる時の凛、

いつにも増してすごく綺麗だ。」






"綺麗"




なんて言葉、言われ慣れてるはずがない。





「っ……、やめて、」





今までにない感情に恥ずかしくなって





「そーゆーこと、言わないで、」




言葉が途切れ途切れになる。





きっと、今の私、真っ赤だ。



身体が熱くて、本当にこれは自分の身体なのかと疑ってもいいくらい。