スヤスヤと眠る春を今度は遠くから眺めて
(……毛布でも掛けてあげるか)
私の部屋から毛布を取ってきて、
起こさない程度に優しく掛けてあげた。
きっと、疲れているのだろう。
私の前ではずっと笑顔を浮かべているけれど
こんなにグッスリと眠っているのだから、きっとソレは疲れている証拠だ。
(……いつも朝早いもんね)
なぜか、同情してしまった。
疲れているであろう彼をそのままにして
(夕飯何にしよう)
そんな事を考えながらその場を離れようとした時
ふと、机の上に置かれたあの小説が目に入る。
「…………………」
ソッと触れて、少し眺めた。
……一瞬、読んでみたいという気持ちになってしまったから。
私が紹介した本を、良い話だったと褒めてくれた春が読んでいるから……気になって。
(………今度、借りてみる?)
後ろを向けてストーリーを読んでみる。
どうやらこの小説は純愛ストーリーみたいだ。
(恋愛モノ、好きなんだ)
意外。と。
一瞬思ってしまったけれど、
よくよく考えてみれば、私の教えた小説も恋愛モノだった。
それを良い話だって言っていたんだから意外でもないか…
スヤスヤと眠る春に視線を移す。
今度は深い眠りについているみたいで、
起きる様子はなかった。