駐車場へと戻り、車に乗り込むと
「満喫できた?」
なんて、いつも通りの声でそう言う。
「急にどうしたの?声変だったけど」
「ああ、なんか喉に詰まっちゃってさ〜」
「そう……」
それにしても変な声だった。
なんか無理に低い声を出してる、みたいな。
怒った時、きっとそんな声を出すんだろうなって勝手にそう思った。
「他に寄りたいところない?」
「うん、私はここに来てみたかっただけだから」
読みたい本も買えたし、満足だ。
「じゃあー…」
顔をハンドルの上に置いて、何かを考えている様子の彼を見つめれば
「今度は俺の行きたいとこ、付き合ってもらおうかな?」
と、私の反応を伺うコイツ。
断るという言葉は、今の私には頭になくて。
素直にコクリと頷いた。
私が本屋にいる間ずっと付き合っていてくれたんだから、私も付き合ってあげようと思ったんだ。