「あ、凛。」
近くで私を呼ぶ声。
そこには私が探していた彼がいて
「ちょうど良かった」
呼ぶ手間が省けた。
「店内、回れた?」と私の元へやって来る彼。
そんな中、
「………え、待って…『カイ』に似てない?」
「思った…!」
と。後ろからそんな声が聞こえる。
(え、どこに?)
私も気になってキョロキョロと見渡すけれど、目の前にはコイツしかいない。
「………、凛、帰ろっか。」
「えっ、何その声……っ、」
突如、いつもと違う声を出すコイツに不思議に思って聞くも、軽く口元を抑えられた。
手を引かれて、引っ張られるように連れてかれる私。
「………声、違うかったね?」
「気のせいか~ 残念。」
遠のいていくそんな声を微かに聞きながら───。