その言葉に甘えるように、それから私は1時間ほど店内を回っていたと思う。
欲しい物も買えて、大満足だ。
堪能した私はアイツがいた場所へと来たけれど、そこに彼はいなくて
(……電話、かけるか)
携帯を取り出す。
だけど、アイツが真剣に見つめていた物がなんだったのか気になって
その小説に目を移せば
この間、お店に大量に届いていたあの小説。
(ここは1日前から出してるんだ…)
確か、あの小説は明日発売のはずだけど。
手に取り、眺める。
見た目はお店に届いた物ともちろん同じ。
ただ、やはりここも映画化が決まったソレは売れ行きが上がるとみて、大量に仕入れているみたいだ。
積み上がるようにして置いてあるから。
と。
「あっ、あったあった!」
高校生くらいの女の子2人がやってきて、私は少し横にずれて場所をあける。
「コレだよ!『カイ』が主演の映画!」
「(カイ…?)」
カイという名前を発するその子は、もう1人の子にその小説を勧めてた。
私はこっそり聞き耳を立てて、2人の話を聞く。
「いつ公開だっけ~?」
「今年の4月らしいよ!あ~!早くみたーい!!」
「キスシーンあったらどうしよ~」
「見たいけど、見れない!」
キャッキャッと楽しそうに喋るこの子達を横目に
カイって人、きっと有名な俳優さんなんだろうな、と頭の片隅で考えた。
ポスターも何も無いからどんな人なのか全く分からないけれど。
ただ、名前は覚えた。