「手際いいね」
「だから近いって」
「美味しそう」
「それはもー分かったから…」
いつの間にかマフラーを外しているから
整っている顔が至近距離にあって、なんだか緊張する。
彼氏なんていたことがなかったんだから
男の人とこんな距離になるのは満員電車くらいしかないし、
ましてや
整った顔の持ち主と至近距離になることなんて、慣れているわけがない。
「あ。髪の毛ついちゃうよ」
その距離から逃れたくて顔を俯かせていたら、
サラッ、と髪の毛を触られた。
「危なかったね~
凛の髪も味付けされちゃうところだったよ」
そのまま、髪を耳にかけられる。
「──あれ。 耳、赤いね」
「………気のせい」
「俺視力良いから気のせいじゃないと思うんだけどな~」
「っ!」
フニフニと弄ぶように私の耳を触るコイツ。
たったそれだけなのに
何故か私の胸はドキドキして、触られている部分がやけに熱い。