プツ、と。
第1ボタンはいつの間にか外されて
春はその場所にツーッと指を滑らせた。
少し冷たい指先にピクリと身体が震える。
「あの時の、まだ残ってるね」
「う、ん……」
「この痕が消えて無くなるまでには帰ってくるよ」
「………約束」
「うん。約束」
ふわりと優しく頭を撫でられると、
春はどこか苦しげに笑みを見せては
私の手を引いて立ち上がる。
「じゃあ、今度こそ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
バタンッ、と。ドアが閉まるまで。
春の姿が見えなくなるまで見送った。
(………行っちゃった)
少しの間って、どのくらいなのよ。
たった今別れたばかりだというのにその日数が気になって仕方がない。
聞いたところで曖昧に答えられるだけ。
「はぁ…」と小さく溜め息をついて外されたボタンをとめなおす。
強引で、自分勝手で、抱きつき癖があって、キス魔で。
鬱陶しいくらいに私のことが好きなアイツ。
出会いは最悪。なのに今じゃ芽生えたことのない気持ちにさせられて
ドアが閉まると寂しさが突風のように襲う。
ねえ、春。
春は………私をどこまで依存させる気なの。