ヤキモチ…? 私が?
「何言って……」
反論しようにも、なぜか出来ない。
だって
その言葉が
やけにしっくりきてしまったから。
由希子さんとの2人っきりの時間も
表紙を飾る2人の姿も
大々的に貼られたポスターも
今日遅く帰ってきたことだって、もしかしたらまた桜田紬と飲んでいたんじゃないかと考えてはモヤモヤとうざったくて。
ついさっきテレビで流れていた映像を見た瞬間にムシャクシャした。
(───あ、そっか。嫉妬してるんだ、私。)
「あー……」
「っ!ちょっ…と」
声を漏らす春は再び私をソファーへと押し倒すと、すぐに春の重みが私にのしかかる。
するとリモコンが背中にあたってピッと音が鳴った。
どうやら今度は電源をオフにしたらしい。
テレビの音がなくなり、部屋に響き渡るのは私達の会話と微かに聞こえるロボット掃除機の稼働音のみ。
「俺今日死んでもいいや」
「なにバカなことを……」
「だって凛からキスしてくれた。しかも嫉妬まで」
「喜ぶことじゃないでしょ」
「喜ぶよ」
「だって、」と続ける春は
「嫉妬するほど" 俺のことが好き "ってことじゃん」
「っ、」
柔らかい目をしてとても嬉しそうに微笑んでいた。
勝手に怒って、よく分からない想いをぶつけたというのに……まさかこんなにも喜ばれるなんて。
「どうしよう。もっと妬かせたいなぁ…」
ニヒルの笑みを浮かばせながらそんなことを呟くコイツに、思わず私の目が点になる。
確か似たようなことを慎二くんも言っていたなと。
変な性癖だと思っていたけど、まさかここにもそれっぽい人がいるとは。
基本みんなそうだと言っていた慎二くんの言葉はあながち間違ってなかったのかもしれない。
「凛」
サラリと髪をすくわれて
今度は春からそこにキスを落とす。
そして優しい声でこう言った。
「もっと俺に依存していいんだよ」
私を見つめる春の眼差し。
艶めいて色っぽい、熱い視線。
私はまんまとその瞳に釘付けになってしまう。
ギシッとソファーが軋む音。
じわじわと伝わる春のぬくもり。
胸の高まりはもう抑えることなんて出来なくて──…
「……そうね。それもいいかも」
私を見下ろす春の頬にそっと手を添えた……ときだった。