「えー……どうしても?」

「……ダメ」

「なんで?」

「気分じゃない」




ピシャッと壁を作るように言い放つ。




あれ。こんなこと、前にもあったような…




デジャヴのように感じるそれは、確かに過去に経験したことを表していた。




真剣な瞳に甘い雰囲気。


この状況を拒否すれば


確かあの時、春は───────





「!?」





過去の出来事を思い出すも、時すでに遅し。





ニコリ。


爽やかに微笑む彼は



「だったらその気にさせる」



なんて言って


私の有無を聞くまでもなく、
強引にソファーへ押し倒すのだ。





「ちょっと、春っ…!」





想いを伝えたあとも
春の強引さは未だ変わらず。




…………いや。


春は出会った頃から何も変わってない。




変わってしまったのは───────私だ。






「知ってた?」




見える景色が変わった今、そこには優越に笑って私を見下ろす春がいる。




「人の心って、移りやすいものなんだよ」

「っ……何が言いたいの」





思わず胸元を手で死守する私。



けれど簡単に引き剥がされてしまうと、

春は私の左胸辺りに手をあてた。




「だからさぁ…」





ビクッと身体震える。



心臓の動きは間違いなく速い。





「凛のここも、凛の全ても」




されるがままの私は力が失ったかのように動けなくて。




「────逃げられないように繋ぎ止めておかなくちゃね」




掴まれている手。



その手に、指先に


まるで壊れそうなものを扱うみたいに


春はそこに軽い口付けを落としていく。




「っ………」




振り払えなかった。


ダメだと、そう分かっているのに抗えない。





私は今、春の誘惑にまんまと流されてる。