「……ご馳走様でした」
手を合わせると、春はその様子を見て立ち上がった。
使った食器を片付け始めたのだから、もう部屋に戻るんだと思う。
カチャカチャと食器同士が当たる音。
(……私も、片付けないと。)
一緒になって目前の食器に手を触れた。
この空間に広がるのは
食器同士が当たって鳴る高い音。
と。
「────え。」
春の驚いたような短い声。
「なんで……泣いてんの」
言われて気づいた。
視界が滲んでいるのは、
私が今涙を流しているからだと。
ポタッ、と。
それが机の上にこぼれ落ちる。
「あ、れ……?」
ツーと流れるそれは
とても静かに頬を伝っていた。
自分でも分からなかった。
泣く理由なんてどこにもなかったはずなのに
なんでこんなにも溢れてしまうのか。
なんでこんなにも胸が苦しいのか。
なんで、こんなにも────
「凛…?」
彼に触れたくなるのか。