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「………春」

「んー?」

「…近い」





ソファーで本を読む私に

くっつくようにして春がいる。



肩に腕を回されているし、たまに頬を擦り寄せてきたりもする。


べったりすぎてちょっと鬱陶しいほど。





「読みにくいって」

「あー、ごめんね?」





そう言えば少しだけ距離をとってくれるけど、5分もすればまた同じ体勢になってる。





(ここで本は読むべきじゃないな…)





今更だけどそんなことに気がついた私。



パタンと本を閉じれば、春は嬉しそうな顔をした。





「読まないの?」

「読めないの」

「誰のせい?」

「あんたのせい」





そしてまた、嬉しそうな顔をする。



何が嬉しいんだ。





「やっとこっち見た」

「……だったらなに」



「全然構ってくれないから」





スっと伸びてきた手が私の頬を撫でる。





「ちょっと妬いちゃった」





とても妬いてるようには見えない表情。


ふわりと笑って、私に微笑みかける。



その目が真剣な瞳に切り替わると、





(あ、キス、される)





咄嗟に勘づく。



だって、その瞳には、見覚えがあるから。




瞬間、私の心の中でモヤッ…と霧がかかる。




真剣な瞳に甘い雰囲気。



この状況が私をムシャクシャさせた。





「っ、まって、」





近づいてきた春の口に手をあてる。





「今は、ヤダ」





そう拒絶すれば、





「なんで?」





春は怪訝な顔を浮かべた。





「なんでって…」





なんて言えばいいのか分からないけど





「嫌なものは嫌。」





ムシャクシャしていて

少しキツめに言ってしまった。




なぜか今、春の目を見れなくて。


目線を下へおろしていれば





「っ、……」





春の口にあてていた手のひらを舐められてしまい、その変な感触にピクリと反応したのも束の間。





「ちょ…春っ」





ニコリ。


とても爽やかに微笑まれた、かと思えば。




その手は春の大きな手に掴まれ


力任せに私をソファーに押し倒そうとした。





あぁ…そうだった。



コイツ……強引な男、だった。