__________________________________
「お疲れ様でした!」
急ぐようにして店を出た。
最後まで慎二くんはセフレがどうのこうのって言っていた気がするけれど、もはやウザいを通り越してめんどくさくなった。
だから、フル無視。
………そんなことよりも、
私は一刻も早く春と話がしたかった。
「っ、はぁ……」
お店から春の家までの道のりをずっと走った。
そのため帰ってきた時間はいつもより早くて、呼吸は荒れているもののエレベーターを乗っている間に落ち着かせた。
32階に着き、鍵を出して、ドアを開ける。
もちろん出迎えてくれるのは
いつものようにロボット掃除機で。
「た、ただいま…!」
帰ってきた事を知らせるように、そう言った。
返事は……ない。
(寝てるのかな)
帰ったら寝るって言っていたし、
きっとそうだと思った。
ガチャッとリビングのドアを開ける。
ソファーで寝ているのかと思って。
だけど、そこに彼はいない。
(じゃあ…部屋に?)
入ることに少し躊躇ったけれど、
"ここの本読むなら、この部屋使っていいからね。基本寝る時しか使ってないし。"
そう言われていた事を思い出して、躊躇う意味がなくなった私は軽くノックをした。
「春、開けるよ。」
一応、声をかけて。
キィ…と、恐る恐るドアを開ければ
「あ、れ…?」
ここにも彼の姿はない。
(なんで、いないの?)
家帰るって、言ってたじゃん。
じゃあどこに……
ふと玄関に視線がいく。
そこに
春の靴は
なかった。