「しのに頼みがある」


今まで頼みなんて何度もしてきた。

しのが「またかよ」と呆れ顔で呟いても、笑ってスルー。


「サリーちゃんのことを気にかけてほしい」


しかし、今回ばかりはいつもと違う。

拒否は受けつけない強制的なお願い。


「しのに任せる」


返事はいらないからそれだけ伝えて、俺は踵を返す。


「……万桜くんはそれでいいの?」


すべてを察したようなしのの問いかけが届いて、足を止める。


良くねぇよ。

他の男に任せるなんて嫌に決まってる。


それもしのに……。

しのはカッコイイから、2人が仲良くなるのは不安で仕方ない。


でも、俺じゃどうしようもないから。


「いいよ」


振り返らずに答えて、今度こそ立ち去った。