「しの」
その日の放課後。
部活へ行く前のしのを引き止めた。
「なに?」
剣道着のしの。
浮いた噂が1つもなく彼女もいないのは、この男の不思議なところ。
昔は可愛い顔した中性的な容姿だったのに、中学に入った頃から著しい成長を見せ男らしくなった。
硬派な印象が女心をくすぐるのか、特に年上にモテている。
優れているのは、見た目だけじゃない。中身も。
俺には厳しいけど、基本的に優しいし面倒見も良い。
俺が再試で泣きついた時、「アホ」と言いつつも夜遅くまで勉強に付き合ってくれた。……頭の良さは大差ないのに。
欠点らしい欠点は、おっちょこちょいで忘れ物が多いところ。
完璧じゃないのがむしろ好感。
自信を持って言える。
しのは、俺が知る男の中で誰よりもカッコイイって。