「ジャンケンに負けてパシリ中です」
「パシリ?」
サリーちゃんのその返答にすら反応して、つい眉をピクつかせて聞き返してしまった。
だけど、どうやらしのたちとのジャンケンに負けただけらしく、俺の懸念は杞憂に終わる。
……言うなら今しかないよな。
サリーちゃんが買う手を止めたタイミングで、俺は話しかけた。
「そうだ、サリーちゃん……」
なるべくいつも通り。
それでも俺は、役者でも駆け引き上手でもないから、自分の心を完璧に押し殺すことなんてできない。
だから、笑みを作ることで自分を偽る。
「寒くなってきたでしょ?……だから、しばらく屋上へ行くのやめようかと思って……みんな、それぞれのクラスで過ごすことにした」
「そうなんですね……」
シュンとするサリーちゃんの顔を見て痛むのは俺の心。
だけど、サリーちゃんが傷つかないならそれでいい。
俺がいくらでも傷を作る。