聞こえてくる鈍い音。
体が動かせないからよく見えない。
鈍い音と怒声を聞いたあと、急に静かになって……。
そのあとにすぐ私に触れた熱い手。
歪んだ視界にある人物が映り込んで、目を疑う。
……なんで。
なんで、いるの。
さっき1階でエレベーターからおろしたじゃん……。
もうすぐ、外に行けたじゃん……。
それなのになんでここにいるの……──、暁。
「美鈴!!」
私を支えて起こしたのは暁で、彼は私を呼ぶ。
走ってきて乱れている呼吸。
たぶん……という絶対、階段を駆け上がってきたんだ。
息が乱れていても彼は何度も私を呼んだ。
……幻覚なんかじゃない。
体温があるから本物の暁。
「なんで……?なんでいるの……」
口を開けば震えてしまう声。
彼を見て再びどんどん涙が溢れていく。