「美鈴……っ!!」
ぐいっと腕をつかまれて。
私は彼のほうへと引き寄せられた。
ずっと歪んでる視界。
暁は近くにいるはずなのに、声はどこか遠くに感じる。
「……暁、ごめん」
小さくつぶやいた。
「いいから、なにも言わなくていいからゆっくり息しろ……!!」
「……ん」
できるだけゆっくり呼吸を繰り返すけど、少しも落ちつかない。
……今、何階だろう。
もうすぐ1階?
目を向けたのは、エレベーター内に表示されている現在の階の数字。
あともう少しで1階に到着するところだった。
なにがあるかわからないから武器持たなきゃ……。
そう思っても動けずにいれば、暁は私を壁に寄りかからせると鞄に手を伸ばす。
中を漁ると取り出したもの。
彼が手に取ったのは、折りたたみのナイフ。
鋭い刃物をだすと、それを……自分の左足に刺した。