目の前に出された手。
これは、これ以上近づくなってこと。
「……っ」
暁はぐったり倒れながら私を視界に捉えた。
目が合うと、目を見開く彼。
私を見てすごく驚いてる様子。
暁の口元に貼ってあるのはガムテープ。
声を出せない状態で、目でなにかを訴えてくる。
なんで危険なところに1人で来たのか。
バカじゃねぇの。
とか……暁の言いたいことはなんとなくわかる。
私1人で来て、暁はぜったい怒るだろうって思ってた。
私は彼をよく見る。
暁の手足には何重にも巻いてある鎖。
彼は傷だらけ。
でも頭にだけは包帯が巻いてあって、そこから血が滲んでる。
……ひどい。
こんなにケガさせて、ひどすぎる……。
込み上げてくる怒り。
ぎゅっと強く自分の拳を握った。