「わぁ…」



今までの森とは一段と違う神秘的な森だ。


綺麗な湖に豊かな緑。

木漏れ日から光が射し込み、木々が手を取り合うようにして並んでいた。



「えっ…」



歩き進んでいると、前方に見えた見覚えのあるものに目を奪われた。



「赤色の…紐…?」



遠くだが確かに見える。


風が吹き、なびいている。


私もああやって木に結った。

私の髪紐なの…? そしたら何でここに…。


ひょっとして……私、この場所で迷子になってジュリって虎に追いかけられてたのかな…?


この紐から……確かに1時の方向から歩いてきた…。

そこで光が射し込む場所があって……。

記憶の中にある木は3本連なっていたし、奥には湖もあった…。


その湖を超せば……ノアの家…。


3つの条件は当てはまっているが……。



いや、おかしい!


どことなく不意に落ちない。



ノアの家が神社な訳ないし、私が知っている神社とはかけ離れた姿だ。


この場所は秘密の場所と作りは似ているが、湖も森もこことは天と地の差くらい違う。


あっちの森は昼間だとは言え、薄暗くて元気がない。

湖だって、泥や苔で汚れている。


けれどここは、まるで誰かが手入れをしているみたいに自然な姿で美しい。


同じ場所、と言うことはあり得ない。

たまたま似ているだけ…。


そう思っても、モヤがかかったみたいにすっきりしない。


何かが引っかかる。


でもその正体なんてわからず…。



「………」



深く考え込む。


……この先に丘があって、私の家も…。


…とりあえず、進んでみよう。

考えるのはそれからだ。


この先に何があろうと、何とかなるはずだから。