そうこうしているうちに、空には鈍色が一面に広がっていた。
ポツリ
「ん?」
雨だ。
「空が…泣いてる…」
悲しそうに見えても、それは儚く美しい。
その悲しみは地面に水玉模様を彩って、時間が経てばその悲しみが大地の生きる源となる。
けれど、いつまでも消えない悲しみ。
それは人間の感情の変化と同じだ。
「どうしようかな……」
外に出て森が広がっているとわかってから、どう行動したら良いのか…。
森で迷子になったことが脳裏を掠め、雨が降っていることで行動が制限される。
別に急いでどこかに行かなきゃだめって訳じゃないし…まあいっか。
あんなに困っていたのが嘘かのように、私の心は凪いでいた。
私は気持ちの変化が激しいのかもしれない。
でも何かしていないと落ち着かなくて、建物の屋根の下を伝いながら建物の外周を探索し始めた。
建物を一周しかけた頃、獣道のようなものを見つけた。
獣道は、生き物たちが何度も通った場所が獣道となる。
だから人でも有り得る。
つまり…ここを通れば誰かに会えるかも…?
そしたらここがどこか聞けるし、少しは困らないと、思う…。
あくまで可能性だから……この先に何があっても否めない。
それが現実であり、自分が選んだことだから。
しばらくすると、雨が上がった。
水溜まりに小さな姿が映る。
黒い陰に妖しく不気味に輝く桜色。
本当に異端だな…。私が見てもそう思うんだから、もう…隠さなきゃな。
知らない場所に突然来て、前よりももっと情けなくなっちゃったな…。
本当の独りだ。
こんな世界、地球にあったのかと思うほど見違える。
私は何故、ここに立たされているのか。
ここで何を強いられているのか。
疑問しかない。
その疑問を解決するには、人の手を借りないといけない。
だから……仕方ない。
どれだけ人が怖くて、トラウマでも……乗り越えなければまたスタートからのやり直しだ。
「もっと強くなりたい」
覚悟を決めて、潤った草木に身を潜らせた。