私の名前は中島皐月
どこにでもいる普通の高校2年生。

両親は私が幼い頃に離婚していて、私はずっとお母さんと2人で暮らしてきた。お母さんは忙しいのにいつも笑顔で、時間を作っては私と一緒に遊んでくれた。だから寂しいと思ったことは無かったし、お母さんが幸せになれるなら再婚だって大賛成。今まで苦労してきた分、自分の幸せを掴んでほしいと思ってる。

……うん、だから再婚すること自体は賛成するし、応援するんだけど。

なんで今から寝ようとしてるこのタイミングで言うのかな、お母さん

「えーと……いくら何でも急すぎない?私、何にも聞かされてないんだけど……」

「言おう言おうと思ってたんだけど、皐月が夏休みに入ってからの方がいいかなって思ったのよ。この間まで期末試験でバタバタしてたでしょ?」

「それは、そうだけどっ」

確かに、今回の期末試験は範囲が広い上にレポートの提出期限も重なって忙しかったのは事実。
だけどそんな重要な話があるならいくらでも時間を割いたのに……!

そんな私の心境を知ってか知らずか、お母さんは笑顔で私の肩を叩いた。

「戸惑う気持ちは分かるわ。だけど、相手の方はとっても良い人だから大丈夫よ。皐月と同い年の息子さんもいらっしゃるから、きっとすぐに打ち解けられるわ」

「えっ、向こうにも子どもがいるの?しかも息子?!」

「そうよ。写真でしか見たことないけど、かっこいい子だったわよ」

楽しそうに言うお母さんとは対照的に、私の心はずるずると沈んでいく。

「どうしよう……新しいお父さんだけじゃなく、兄弟ができるなんて……!心の準備が……」

「息子さんは誕生日が9月だから皐月の方が妹ね。お母さん、男の子も欲しかったから嬉しいわ〜」

呑気なことを言うお母さんに何を言っても無駄だと思った私は、言い知れぬ不安を胸を抱えながら布団に潜り込んだ。

その不安の正体を知るのは、もう少し先の話。