宏子ちゃんは言った。「中学を卒業して就職する」と。


「ひろしくんは行けって言うんだけど、『お兄ちゃんを助けるんだ』って聞かなくて……」


「そうなんだ……」


「まあでも、ひろしくん、高校卒業したら就職するし、そうなれば学費くらいは何とかなるから、意地でも行かせるつもりよ」


それを聞いて私は安心したのと同時に、広田博はせっかく特進クラスに入れたのに、大学に行かないんだというどこか、寂しい気持ちになった。


でもこればっかりは、他人(ひと)の家のことだ。私がとやかく意見するわけにはいかない。


「あ、いずみちゃんのバイト代は、絶対ひろしくんが返すから」


「本当にいいって!」