「お兄ちゃん、ちょっと小泉さんと話があるから」と、広田博は、学校にいるときと同じように、背筋を張って、底から響くような低い声で言った。


宏子ちゃんは、持ち前の気遣いで、私に頭を何度も下げて、帰って行った。その姿を見ていると、健気で、どうしてこんないい子が、こんな苦労をしなきゃいけないのだろうって気持ちになって、胸が痛かった。


「いずみちゃん、本当にありがとうねえ」


と私といるときの、なよなよの広田博に戻ったけど、頭を下げたときの表情は、変わらず真剣で、私は何だかとんでもなく申し訳ない気持ちになった。


「余計なお節介だったかな?」


「いや、ホントそんなことないよお。ありがとう。本当に……」


「だから、好きでやったことなんだって。それより……」私は聞いてはいけないんだろうけど、気になって、気になって聞かずにいられなかった。


「宏子ちゃん、高校行かないの?」