昼休憩になって、三島志麻が「近くに昼飯が食えるようなところがある」と言って、連れてこられた場所は、国分寺(こくぶんじ)だった。


奈良の大仏を作らせたことで有名な聖武天皇(しょうむてんのう)が命令して、全国各地に作らせたお寺だ。


「元々は疫病や災害が相次いで起こっていた当時、仏教に救いを求める形で、作られた寺なんだよ」


と、三島志麻が私でも知っていることを言った。でも、私は、


「へえ、詳しいんだね」


と言っておいた。三島志麻はプライドも高い。こうするのが、彼にとってはいいのだ。


国分寺の前は広場になっていて、ベンチがあった。


そこに二人並んで座って、私は早起きして作ったお弁当を三島志麻の膝の上に置いた。


「上手くできてるかわかんないけど……」


三島志麻が唐揚げを食べる。そして、うんうんと頷いた。


「美味しい?」


またうんうんと頷いた。


「よかった。ちゃんとできてるか心配だったんだ」


本当は朝ごはんの代わりになるくらい味見をしているから、美味しいのは知っている。私も一口、唐揚げを食べると、揚げたてではないものの、よく味が染みて美味しかった。


それから、二人とも特に会話もなく、国分寺を眺めながらお弁当を食べた。


聖武天皇も、まさか1200年後の世界では、お弁当を食べる場所として国分寺が使われることになるなんて、思ってもみなかっただろう。