流青が、やや乱暴に置いた鞄はソファーの側面に当たってクタッとよれた。
そこに寝転んでスマホをいじり始めようとしていた朱雀は、やや不穏な空気に親指を止めて足元の鞄に視線を移す。
「なんかあった?」
いつもより低い流青の声は、冷静を装っているのがわかる。
「…あん?」
とぼけてみるが…流青の瞳の中に映り込むものが自分しかいないことがわかると…逆にこれ以上とぼけると、マジなだけに面倒臭い気がした。
「どうかしたかって聞いてる。」
明らかに流青は苛立っている。
「何がっ…。」
朱雀は少し反抗的な目で流青を睨んだ。
「ハルちゃんだよっ…。」
朱雀は、大きな溜息をついてソファーから立ち上がりキッチンへと向かった。
たぶん、説明なんて出来ないから。
上手く言い訳なんて出来ない自分をよく知っている。