スゥは唇をそっと離すと、思わず声を上げそうになる私の口元を手のひらで抑える。

あたふたする私にもう一度軽いキスをすると自分の口角についた泡を親指で拭って…何事もなかったかのようにバスルームから出て行った。

「………。ただいま。」
玄関でスニーカーを脱ぐリュウの声が聞こえる。

「おっ。おかえり。」
スゥはいつも通り、首に巻いたタオルで髪をワシャワシャさせてしれっとやり過ごす。

私は…焦りっぱなしの気持ちを悟られまいと必死にその場を取り繕う。

「お…おかえり。早かったんだね…。」

「あ…あぁ…。そっかな。」

「てっきり、アリスさんと一緒かと…。」

「今日はさすがに断ったよ…(苦笑)
閉店後に渋谷の店でミーティングもあったし。」

「そうなんだ…。」

「関東エリア大会の…アシスタントの方との打ち合わせ。」