ひなと話し初めて、1年が過ぎた頃から
母さんの様子が更におかしくなった
帰ってきてもぼーとすることが増え
何より、タバコを吸うようになった
たまに僕の腕にタバコを押し当て、笑う
そんな母さんが怖い
でも、幼い僕はどうしていいか分からない
ただ、耐える
これが終われば、ひなと話せる
それだけを思い、また耐える
僕が寝てた時だ、トントンと何かを切る音が聞こえてくる
怖くなって、恐る恐る近づくと
料理をしている母さん
料理をする姿なんて初めて見る
僕に気づいた母さんは振り返る
「あら、起きたの?」
いつもより優しい声音に違和感を感じる
「ねぇ、お母さんの事嫌い?」
唐突な質問…僕は母さんを好きだなんて思ったことはない、嫌いだとも
「ねぇ、嫌い?」
怒りが混じった声で聞き返す
僕は慌てて、首を横に振る
「そっか、、」
そう言って近づいてくる
僕は右手に握られている、包丁が怖くて、1歩下がる
「何で、逃げるの?」
「包丁危ないよ?」
「大丈夫よー、痛くない痛くない」
僕の体に包丁を向ける母さん
「か、あさん?」
「大丈夫だから」
「っい」
気づいた時には、浅く包丁が僕の体を這う
痛くて、痛くて、ただ痛い
あれから何時間経ったのか、僕はいつの間にか気を失っていたみたいだ
母さんはどこに行ったのか家には居ない
腕を見ると、切られた腕から血が出ている
このまま、放って置いたら僕は死ぬのかな?
目をつぶると、ひなのことを思い出す
痛い体を起こして、ノートパソコンへと近づく、ひなからのメールを開くと、僕から返事がなかったのを心配したメッセージが届いている
その時、コツコツと階段を上がる音が聞こえてくる
嫌な予感がした僕は急いで、ひなに助けてとそれだけ送った
死にたくない、そう思った
玄関が開く音がして目を向けると
「元気なの?良かった。死んじゃったらどうしようかと思ったよ」
近づいてくる母さんが僕の隣を見る
「あんた、またそれに触ったの?」
僕は怖くて体を起こし、母さんと距離をとる
「なんで逃げるの?待ちなさい」
僕はリビングに入ってきた母さんがキッチンに向かうのを見て、靴も履かずに急いで外へと逃げる
多分、また包丁を取りに行ったんだ
このままじゃ本当に殺される
僕は痛い腕を抑えてできるだけ遠くへ、人がいる所へと足を進める
後ろから母さんが追いかけて来ているのが分かる
追いつかれる、誰か
「助けて」
喉がかれるほど叫びながら走る
今は夜中なのか、暗いから人通りがない
ダメだ、追いつかれる
「待ちなさい」
僕の手を掴む母さん
その手に僕の血がつく
「もう、やめて、僕、良い子にする、から」
「あぁ、何でこんな事に…痛いでしょ?もうお母さんと一緒にお父さんの所へ行こう、いいよね?」
やめてと叫ぶ僕の声はもう聞こえていないみたいだった
母さんの持つ包丁が僕の横腹に刺さる
「、、っう」
あぁ、本当に死んじゃうんだ
足に力が入らない
立っていられない
ひなには、僕の町と近くのコンビニの話ししかした事がない
それに、人間恐怖症のひなが外になんか来れるわけない、僕を助けられる人なんていない
こんな事なら、生まれてくるべきじゃなかった
最後までこんな終わり方、僕はどうして生まれたんだろう
薄れる意識の中、母さんの叫び声と小さな手が僕の手を包み込む温かさを感じた
母さんの様子が更におかしくなった
帰ってきてもぼーとすることが増え
何より、タバコを吸うようになった
たまに僕の腕にタバコを押し当て、笑う
そんな母さんが怖い
でも、幼い僕はどうしていいか分からない
ただ、耐える
これが終われば、ひなと話せる
それだけを思い、また耐える
僕が寝てた時だ、トントンと何かを切る音が聞こえてくる
怖くなって、恐る恐る近づくと
料理をしている母さん
料理をする姿なんて初めて見る
僕に気づいた母さんは振り返る
「あら、起きたの?」
いつもより優しい声音に違和感を感じる
「ねぇ、お母さんの事嫌い?」
唐突な質問…僕は母さんを好きだなんて思ったことはない、嫌いだとも
「ねぇ、嫌い?」
怒りが混じった声で聞き返す
僕は慌てて、首を横に振る
「そっか、、」
そう言って近づいてくる
僕は右手に握られている、包丁が怖くて、1歩下がる
「何で、逃げるの?」
「包丁危ないよ?」
「大丈夫よー、痛くない痛くない」
僕の体に包丁を向ける母さん
「か、あさん?」
「大丈夫だから」
「っい」
気づいた時には、浅く包丁が僕の体を這う
痛くて、痛くて、ただ痛い
あれから何時間経ったのか、僕はいつの間にか気を失っていたみたいだ
母さんはどこに行ったのか家には居ない
腕を見ると、切られた腕から血が出ている
このまま、放って置いたら僕は死ぬのかな?
目をつぶると、ひなのことを思い出す
痛い体を起こして、ノートパソコンへと近づく、ひなからのメールを開くと、僕から返事がなかったのを心配したメッセージが届いている
その時、コツコツと階段を上がる音が聞こえてくる
嫌な予感がした僕は急いで、ひなに助けてとそれだけ送った
死にたくない、そう思った
玄関が開く音がして目を向けると
「元気なの?良かった。死んじゃったらどうしようかと思ったよ」
近づいてくる母さんが僕の隣を見る
「あんた、またそれに触ったの?」
僕は怖くて体を起こし、母さんと距離をとる
「なんで逃げるの?待ちなさい」
僕はリビングに入ってきた母さんがキッチンに向かうのを見て、靴も履かずに急いで外へと逃げる
多分、また包丁を取りに行ったんだ
このままじゃ本当に殺される
僕は痛い腕を抑えてできるだけ遠くへ、人がいる所へと足を進める
後ろから母さんが追いかけて来ているのが分かる
追いつかれる、誰か
「助けて」
喉がかれるほど叫びながら走る
今は夜中なのか、暗いから人通りがない
ダメだ、追いつかれる
「待ちなさい」
僕の手を掴む母さん
その手に僕の血がつく
「もう、やめて、僕、良い子にする、から」
「あぁ、何でこんな事に…痛いでしょ?もうお母さんと一緒にお父さんの所へ行こう、いいよね?」
やめてと叫ぶ僕の声はもう聞こえていないみたいだった
母さんの持つ包丁が僕の横腹に刺さる
「、、っう」
あぁ、本当に死んじゃうんだ
足に力が入らない
立っていられない
ひなには、僕の町と近くのコンビニの話ししかした事がない
それに、人間恐怖症のひなが外になんか来れるわけない、僕を助けられる人なんていない
こんな事なら、生まれてくるべきじゃなかった
最後までこんな終わり方、僕はどうして生まれたんだろう
薄れる意識の中、母さんの叫び声と小さな手が僕の手を包み込む温かさを感じた