「505号室、懐かしいね」


「うん。あの時と変わらない」

この部屋は私と奏くんの思い出の場所


普通の部屋よりも少し広く、机と椅子が置いてある


コンコンとノックの音がして、高橋さんが入ってくる


「懐かしいでしょ。この部屋今は患者さん居ないから、ここで話しましょ」

椅子へと腰をかける高橋さん


「何を聞きたいのかしら」


「僕が運ばれないと行けなかった理由、あの人が最後に、ぼくの、名前を呼んだのはどうしてなんでしょうか?」

隣に座る奏くんの手が私の手に触れ、優しく握られる


その手を握り返すように私は少し強く握る


「そーね。昔の貴方達には話せなかったこと、昔の里美さんは奏くんの事凄く愛していたわ」

その言葉に私たちは目を見開く


そして、ただ、静かにお互いの手を握りしめ、高橋さんの言葉に耳を傾ける