「あ、雨止んだね」


「良かった」

高台へと足を進める奏くん


「あそこ屋根あるよ」

高台の屋根のあるベンチへ座る


「何で、ここに連れてきてくれたの?」


「黙って連れてきてごめんね。1週間前に電話が来たんだ」


「誰、から?」


「病院の人。あの人、死んだって」


「え?会いに行ったの?」


「ううん。会わなかった。でも、いくら離れたくても母親って事実は変えられないね」


「私は奏くんをあんな目に合わせた人、許せないよ」


「うん。僕も許せない。それは、どんな事があっても変わらない」


「うん」


「昔は怖くてこの町には来れなかった。でも、何があったか、何で僕があんな目にあったのか、あの人ね、死ぬ前に僕の名前を呼んだんだって、何でだろうね」


「奏くんの名前を?」


「うん。病院の人が、そう、言ってた」


「聞きに行こうよ」


「え?」



「だから病院、行こうよ」


「ひな?」


私は奏の手を取り歩き出す