「うっ、それは忘れて……」


今になってめちゃくちゃはずかしさが込み上げてくる。

ほんと、黒歴史になりそうなレベルだよ。


「ぜったい忘れない。
仕事中、つらいときとか、思い出してがんばる」


「それはさすがにやめて」


「やだ」

『毎日してくれてもいいのに』


「そっ、それも無理!」



「ふふ、じゃあ、ごはん食べよっか?
俺のだいすきなもの作ってくれて、しかもアーンもしてくれるなんて。俺、ほんと生きててよかった」


「お、大げさだよ……」


めちゃくちゃにこにこして、席に座る。

アーン、は、もうぜったいにする流れなんだ……。


「ん、いただきます」

「めしあがれ」


「っ、あー……うっま。
ほんと、うますぎ」

「ほんとに?」

「うん。
仕事の疲れ、ふっとぶくらい。いくらでも食べれる」


よ、よかったぁ……。

おいしい、おいしいって食べてくれる。


こうしてふたりでごはん食べてるときが一番幸せかも。

「でも、アーン、してくれたら、俺もっと元気出るなぁ」


「うっ……」

「してくれる?」


して、じゃなくて、してくれる?なんて。

あくまで疑問形で聞いて、判断は私に委ねる。


こういうところ、ほんとずるい。


「する。
遥、口、あけて?」


「なにそのセリフ。
あとでベッドの上でも言って」

「バカ言わないで!」


もう、ほんと調子いいんだから……。


遥の横に座って、箸でからあげをもちあげる。


「はい、アーン」

「あー……」