人が良さそうな顔でニコッと笑う延藤くんを見て、思う。

こんなふうにサラッと伊月くんとのことを言うってことは、あの軽口みたいな告白は、やっぱり冗談だったのかな。

特に返事を急かされたり、求められたりもしないし、私もその話題には触れずにいる。


私の返事は、ひとつだけ。
それは、この先も変わることはない。

でも、延藤くんが本気で言ったんじゃないとしたら、きっと返事なんていらないだろうし……。


「てか、真桜ちゃんって、伊月といつも何聴いてんの? 音楽の趣味、合うの?」

「あ、えーと……」


言ってもいいかな。

ナデシコは有名だし、私たちが好きな音楽として趣味がかぶることは、不自然じゃないよね。

隠すのも、おかしいし。


「ナデシコって知ってる? 動画サイトの、音楽ユニットみたいな……」


本当は伊月くんひとりなのだけど、世間的には男女ふたり組ということになっているから、私が真実を知っているのも変だし、ユニットだってことにしておこう。