伊月くんが私をなんとも思っていないとしても、これは勘違いしちゃう……。

嫌われてるってことは、ないと確信はしているけど。


「伊月くん、今も今井先生……お姉さんと歌う練習してるの?」

「ああ。やっぱり、昔みたいに思い通りの声は出せないんだけどな」

「……」


声が入っていないこの新曲を聴いても、思う。

これは、以前と同じ『ナデシコらしい』曲。

声変わり前の、伊月くんの高音の声帯に合わせた曲。

今の彼の地声を聴いている分には、この高さの音を出すのは、とても努力が必要になるのだろう。