延藤くんの大きめの声に、周りの女子が振り返る。

この声量も、絶対にわざとだ。


「そういえばさ、蕪木さんって前は伊月くんにべったりだったよね」

「ね。最近、コウとばっかり一緒だから忘れてたけど」

「蕪木さんって、なんかさぁ……」


ヒソヒソ声にしたつもりなのだろうけど、しっかり聞こえている。

私は無言で、席に座り直した。


「延藤って、本当に性格悪いんだね」


成美ちゃんが、何も言い返せない私の代わりでもと言うように、軽蔑した眼差しを延藤くんに送る。


「えー? そんなこと人に言うくらいだから、成美ちゃんは聖女マリア様みたいに心綺麗なんだろうね」


そして再び、私を挟んだふたりは火花をバチバチと散らし始めた。