教室の扉に、人影が見えた。

それがすぐに伊月くんだと分かって、私は席を立つ。

だけど……


「真桜ちゃん、どこ行くの?」


席を立つやいなや、隣の延藤くんが私の腕を引いた。

成美ちゃんと仲良くケンカをして、こっちなんか見ていないと思っていたのに。


「ど、どこって……、別に」

「まさか、彼氏がここにいるのに、他の男子のところに行こうなんて、思ってないよね?」


わたしが伊月くんのそばに行きたいことを分かっていて、先手を打たれた。