目の前に置かれたドリンクのストローに口を付ける。

私は、歌はもちろん、言葉も一言も発しない。


カラオケって、いつもどれくらいの時間いるのかな。

少しの間座って、トイレに行くタイミングにでもそっと帰っちゃおうかな。

私、明らかに歓迎されていないわけだし、早く帰ったことを影で文句は言われるだろうけど、内心みんな清々しているのが目に浮かぶ。


「暇そうだね、真桜ちゃん」

「延藤くん」


先ほどまで離れた席で盛り上がっていたはずの延藤くんが、隣に座った。


「延藤くん、歌わないの? さっきから、ずっと聞き役だよね」

「ん? 俺だって、一応気使ってんだよ。真桜ちゃんがここにいるの、俺のせいだしね。誰とも喋れなくて、楽しくないでしょ?」


意外……。

私に対して、そういう感情も持ってたんだ。