「今日、空いてるといいねー」

「ねー。こないだなんか、予約が詰まってるからって、延長してもらえなかったし」


カラオケ店に着いたらしい。

先頭にいた女子たちが、店の扉を開けながら笑いあっている。


こういうのって、どの辺で帰ってもいいんだろう。

さすがに私は、延長時間まではいなくていいよね……?

座ってるだけでもいいかな。


なんて、考えるだけで憂うつになる。


「ねー、コウ、あたし、コウにあれ歌って欲しいな」

「とか言って、また俺だけに歌わせる気でしょ」


先頭からの声に、依然として私の隣にいる延藤くんが返す。

そういえば、延藤くんって友達には『コウ』って呼ばれてるって言ってたっけ。

何回聞いても、一瞬誰のことなのか戸惑ってしまう。