「真桜ちゃん、どうせ今、カラオケなら伊月と行きたかったとか考えてんでしょ」

「!!」


心、読まれた……?


「まー、それはそうだろうね。ナデシコの生歌なんか、そばで聴けたら最高だろうし」

「ちょ、ちょっと、名前……!」


人前で、大っぴらに伊月くんとナデシコが同一人物だとバラされて、焦って周りを見る。


先に行く人たちは、自分たちの話に夢中で、誰も振り返らない。

周りを歩く他人たちも、ただ通り過ぎていくだけ。


良かった……。


「大丈夫だって。こんなちっちゃい声、誰にも聞こえてないから」

「聞こえる聞こえないの問題じゃないの。ちゃんと、約束守って。そうじゃなきゃ、私、今すぐ延藤くんの彼女やめるから」

「はいはい」


面倒そうに返す姿に、イライラが湧き上がってくる。

すっごく帰りたい。